白浜動物園のシロクマは、とっても寒い地下室で
嘘くさい海水もどきの水を滴らせ真っ黒な壁を見つめていた。
北極とかで生まれた訳ではないだろうに
どこかここではない違和感を身にまとい
かえりたい
そんな顔をさせて壁を見つめていた。
あまり帰ってはいない実家の北海道に
なんだか僕も想いをはせてみたものの
3月までどっぷり仕事が侵入してきて
帰れるのかどうかすら不安になっている。
東京は急に真冬のような寒さで
部屋にいても手がかじかんでしまうくらい。
会社からの帰りは歩いて帰るんだけど
寒いとノラちゃんもいないわけで
寂しい想いをして公園を突っ切る。
でも、今日は鈴を鳴らした肥えた猫が、
ブニャーと現れて僕の前をのそのそ歩く
逃げる訳でもなく
のそのそと
だから僕もそのペースにあわせる
ゆっくりのそのそ
最後に分かれ道で別々の道っぽかったので
さよおならと頭をなでると
ぶにゃーといって鈴を鳴らした。
あいつはこれから家に帰るのかな。
たまには実家のような誰かが待っている場所に帰りたい
そう思わせる寒さでした。