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by nanook_mdfc5
no.682 退屈な1分
ろうそくに灯を灯す。
小さなろうそく用の小瓶に
火を消したマッチ棒を投げ捨てると
ジワジワと音を立てて、その炎をこそばゆそうにくねってみせた。

デスクに向かって淡々と退職届に記入する。
ドラマにあるような達筆で云々を書くこともなく
名前と住所と電話番号を記し、それを提出をする。
まるでレンタルビデオ屋でカードを発券するみたいに
容易く手続きは終える。

仕事もその量を日に日に減らしてゆき
午後を回ると手持ちぶたさで罪悪感すら感じる。
ぶらぶらと社内を歩いても皆急がしそうに仕事をし、
早めに家路を辿っても今までと違った生活がそこにはあって。
今まで僕が帰る時間には息をひそめていたのかと思うくらい
暖かい光がマンション群を何かの生き物のように彩っていた。

部屋を掃除して思うことは
なんて数の本なんだろう、ってこと。
それらは未だに魅力的で一冊一冊開いてしまう。
全然、部屋が片付かないのもそのせいか。

ろうそくがすべてを溶かしきって
一緒に投げ捨てたマッチ棒が透明なロウに沈んでいく。
このまま灯火が消えると
透明なロウは白く固くなりマッチ棒の亡がらは
恐竜の化石のように閉じ込められるんだろうな。
なんて想像を膨らましては、はがれ落ちそうなコンタクトレンズを
目をぱちくりとさせながら定位置へと運ぶ。

気がつけば2時。
寝すぎた今日は、睡魔がまだ目黒駅あたりで
僕の家まで届くには後、一時間くらいの道のりはあるのかもしれない。
取り留めないのない言葉を連ねただけの今日という日を
誰かの退屈な1分に召還できるのであれば書かない手はないと思う。

勢いで頼んだ辛みそラーメン大盛り。
消化しきったのか、また空腹感に襲われている。
何か食べよう。そして寝よう。
by nanook_mdfc5 | 2008-02-29 01:47 | 日記
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